「離婚」の法律的な意味

2014年04月30日

<1>「離婚」の法律的な意味
~双方の合意がなくても離婚できる場合もあるのです~

・離婚とは?
病める時も、健やかなる時も・・・生涯、共に生きていきましょうと
結婚したものの、様々な事情から別々の道を歩くことを決めて、「離婚」
を選択する事もあります。
離婚するためには、法律上、以下の4つの方法があります。

①協議離婚
夫婦で話し合いをして、「離婚しましょう」と合意すれば、離婚することができます。
当事者の合意によるものなので、どのような事情や理由によるものであっても可能です。
このような離婚を「協議離婚」といい、離婚する夫婦の9割以上が協議離婚によって離婚
しているのが実際です。
この場合、離婚届に必要事項を記入して役所の窓口に提出した時点で離婚成立です。


②調停離婚
離婚する際の条件などで折り合わない場合は、まず、家庭裁判所で離婚の「調停」を
しなければななりません。家庭裁判所で第三者である調停委員をまじえて話し合いをして、
そこで話がまとまれば、離婚することができます。


③審判離婚
調停によっても折り合いがつかず、家庭裁判所が総合的に判断して審判に進めた方がよいと
判断した場合、家庭裁判所で審判という手続きに移ります。この審判の結果による離婚を
「審判離婚」といいます。この審判の結果に納得がいかない場合は、不服を申し立てて、
訴訟を起こすことができます。


④裁判離婚
調停で話し合いがつかない場合、家庭裁判所の審判に納得できない場合、最終的には
離婚訴訟を起こして離婚の請求をすることになります。この離婚訴訟による離婚を「裁判離婚」
といいます。裁判での離婚請求が認められるのは、法定離婚事由(後述)がある場合だけです。

 


・離婚の際に必ず決めなければならないことは?
離婚するには、精神的にも肉体的にも大きなエネルギーが必要とされます。離婚する、という
ことになった場合に、その後のことについて、決めなければならない事が様々あります。


①名字をどうするか?
離婚後、名字を旧姓に戻すこと(「復氏」といいます。)も、結婚後の名字をそのまま
使用することもできます。子どもがいる場合は、子どもの氏についても手続きが必要な場合
があります。


②どちらが子どもをひきとるか?
夫婦間に未成年の子どもがいる場合は、父・母のどちらが子どもの親権者になるかを
決めなければなりません。親権者は、親の感情ではなく、子ども自身のその後の生活等
を最優先に考えて決定されるべきものであって、親の一方的な都合で親権を主張することは
できません。


③財産分与、慰謝料はどのようにするか?
財産分与は、それまでの結婚生活中の財産の精算ですので、離婚の理由がどのようなもので
あっても、堂々と請求できます。専業主婦で収入がなかった場合でも、請求することができます。
慰謝料については、客観的な基準などがありません。その夫婦の事情によって決められるので、
ケース・バイ・ケースです。財産分与は離婚から2年以内、慰謝料は3年以内に請求することが
必要です。


④子どもの養育費をどのように支払いは?
子どもの養育費をいつ、どのような方法で、毎月いくら支払うのか、等をきちんと決めておく
必要があります。支払う側がどんな性格であるかにもよりますが、きちんと書面で決めておくことで、
トラブルを未然に防ぐことができます。


⑤子どもをひきとらない親が子どもに会う方法は?
子どもをひきとらなかった方の親が、離婚後に子どもと会うことを「面接交渉」といいます。
通常、この面接交渉権が認められるので、ひきとらなかった方の親も、離婚後に子どもに会う
ことができます。離婚することになった事情や、離婚した当事者双方の性格等にもよりますが、
いつ、どのくらいの時間、どんな場所で会うのか、などを決めておきましょう。


⑥相手の財産は?
預貯金の額、不動産をもっているか、株などの有価証券、ゴルフ会員権、保険の加入状況・・・
様々なことについて、詳細に調べておく必要があります。美術品(骨董品や絵画など)も財産です。
財産分与の際にこれらの財産状態を把握していることが一つの重要なポイントになってきます。


⑦公的援助
児童扶養手当や母子福祉資金貸付という低利の融資制度など、子どもを抱えて離婚した女性
のために国が援助してくれる制度があるので、離婚後の生活のためには、それらを利用するべき
です。また、相手が離婚に応じてくれない場合は、訴訟によって離婚を請求することになりますが、
この場合、法律で定められた離婚の理由(法的離婚事由)をしっかり主張しなければなりません。
そして、離婚の原因は相手に責任があるということを、証拠をそろえて証明しなければなりません。

 

 

・健康保険・年金、住所変更の手続き等
夫が会社員で、妻の収入が一定未満である場合、妻は夫の社会保険(健康保険と年金)に加入する
仕組みになっていますが、離婚後は本人が自分自身の社会保険に入ることになるので、その手続きを
しなければなりません。健康保険も年金も、強制加入ですので、市区町村の役所窓口での手続きが
必ず必要になります。
離婚によって姓が変わったり、離婚後、引っ越しをして住所が変わる場合には、それに伴って
運転免許証の名前変更・住所変更の手続きをしなければなりません。(手続きは公安委員会の窓口
で受け付けています)その他、郵便局への住所変更届、パスポートや銀行、生命保険などの変更手続き
も必要になります。

 

・離婚届の受理
結婚するときや離婚するときは、婚姻届・離婚届を役所の窓口に提出します。その婚姻届はたかが紙切れ、
されど紙切れです。「必要事項を記載して提出した」という事務的な手続きではありますが、婚姻届は
その二人の「結婚する」という意思を書面で表したものであるからです。
離婚届も同じように、お互いが「離婚する」という意思をもって離婚届に記入し、これを役所の窓口に
提出します。これが受理されてはじめて、離婚が成立するのです。


・離婚届の他にも必要な各種届出
協議離婚の場合、離婚届には本人(夫及び妻)の署名押印の他に、証人2人の署名押印が必要です。
離婚届は市区町村役場の戸籍係へ提出します。
調停・裁判離婚の場合、調停成立の日または判決確定の日から10日以内に届け出が必要で、
その際には関係書類も同時に提出しなければなりません。
また、先述のとおり、住所変更等の各種手続きが必要になるほか、印鑑登録、子どもが学校に通って
いれば、学校関係の手続きも必要になります。

 

・財産分与と慰謝料
離婚に際して決めなければならないことの中で、大きなウェイトを占めることになると思われるものが

財産分与や慰謝料などの金銭的な問題です。
夫婦として生活する上で築いてきた財産を、清算するのが財産分与です。妻が専業主婦で金銭収入が
なかった場合でも、その財産は妻の協力があって築かれたものみなされるので夫婦の共有財産となります。
財産分与は財産の清算ですので、離婚の理由が何であっても、どちらからでも請求できます。例えば、妻の不貞が原因で離婚するような場合であっても、妻の側から財産分与を請求することもできるのです。
ただし、財産分与が請求できる期間は2年に限られています。とりあえず離婚届は先に提出して、財産分与については後で決める、ということも可能ですが、なるべく早いうちに処理をしておく方が安全です。
一方、慰謝料は、財産分与とは異なり、どんな夫婦でも必ず請求できるわけではありません。離婚の原因をつくった責任のある側(「有責配偶者」といいます。)に対して、他方の配偶者が請求することができます。
夫婦双方に同等の離婚原因がある時や、有責配偶者がいない場合、つまり夫婦どちらにも責任を負わなければならないような離婚原因がない場合には、慰謝料を請求しても認められません。

 

・子どもがいる場合の親権者の決定
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、親権者を決めなければならず、親権者が決められていない場合には離婚届が受理されません。
また、養育費についても決める必要があります。(いくらか、どのくらいの期間か、など)
他には、親権者にならなかった方の親が、離婚後に子どもと会ったり、電話で話したり、手紙のやりとりなど、子どもと接触する権利(「面接交渉権」といいます)についても、あらかじめ決めておくとよいでしょう。

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