別居中の生活費
2014年05月9日
<4>別居中の生活費
~別居中でも生活費は請求できる~
[相談]
夫婦仲が悪化し、2年前から夫とは別居生活を送っています。
しかも、昨年から夫は別の女性と生活を始めました。
夫と話し合って、戸籍上の離婚は子どもが成人してからすることになっていますが、
それまでの間、夫に生活費を請求したいのですが、可能でしょうか?
[回答]
民法上、夫婦には「婚姻費用分担義務」があります。
婚姻を継続する上で必要になる費用、つまり生活費などは、分担して負担する義務があるのです。
あなたと夫は戸籍上夫婦ですから、夫は、生活費や子どもの養育費、医療費、収入相応の交際費などを
あなたに支払う義務があるのであって、あなたは夫に生活費を請求できます。ただし、夫には何の落ち度もないのにあなたが夫を追い出した場合など、別居の原因が一方的にあなたにある場合は請求できない場合もあります。
請求できる金額についてはケースバイケースです。
当事者で話がまとまれば問題ありませんが、金額に折り合いがつかないなど、話がまとまらない場合は、
家庭裁判所の調停や審判の手続きによって解決することができます。この場合、別居原因や婚姻関係の
破たんの原因、両者の収入、子どもにかかる費用や夫と暮らしている女性の生活費(婚姻関係の破たんに
対する責任の大きさも考慮)など様々なことを考慮のうえ、金額が判断されます。
当事者で話がまとまらず家庭裁判所の手続きとなると、解決して金額が決まり、生活費の支払いが始まる
まで時間がかかります。この間の生活費については、仮に支払ってもらうための制度(調停前の仮処分、
審判前の保全処分)があるので。家庭裁判所に手続きを申し立てるとよいでしょう。制度によっては相手の財産隠しを防いだりすることもできますが、書類の用意など、面倒な手続きも必要になってくるので弁護士などの専門家に相談してみましょう。
・「生活費」の算定基準
生活費と一口に言っても、両親健在の実家に戻る場合と、独立して生活する場合とでは、当然必要になる
費用の額も違ってきます。金額の算定にあたっては、元々の生活水準や別居の状態など様々な事情が考慮
されますが、裁判で争いなった場合には次のような基準が使われています。
①労研方式
文部科学省管轄の「労働科学研究所」が行った実態調査に基づいて算出した消費単位にしたがって、
個々人の生活費を計算。裁判では最も多用されている方式。
②標準生計方式
人事院・都道府県といった行政機関が行った実態調査に基づいて算出した「標準生計費」を基準として
計算。
③生活保護基準方式
厚生労働大臣が定めた生活保護のための基準にしたがって生活費を計算。