養育費は親権者が全額負担するのか
2014年05月9日
<19>養育費は親権者が全額負担するのか
[相談]
私と夫は結婚してから15年が経過し、子どもが小学校に上がるタイミングで私は資格を生かして働く
ようになりましたが、仕事と家庭の両立などの問題から、夫との対立が次第に激しくなり、ついには
離婚することになりました。
そして、離婚するにあたって、子どもの親権者は私がなるということで決着がつきました。
しかし、離婚して子供と二人で生活するようになってから住居費など様々な費用がかかるようになり、
子どもの養育費も相当な負担となってきたため、別れた夫に対していくらかの養育費の負担を請求した
ところ、親権がないことを理由に断られてしまいました。
この場合、私一人で頑張るしかないのでしょうか。
[回答]
まずは、子どもの養育費の負担をするのは誰なのかについて考えましょう。
離婚とは、それまで法律的に夫婦であった男女の関係を解消させるということですが、その一方で、
その男女が婚姻中に産まれた子供との関係まで解消することではありません。
確かに子供がいる夫婦が離婚をするときには、必ず子供に親権者を定めなければなりません。しかしそれは子供の将来のためであって、親権がなくなったからといって親子の関係が法律的に解消させるわけではないのです。
つまり、親として子供に対して負っている扶養義務は失われないということなので、あなたのケースでも
別れた夫は子供に対して扶養義務を負っています。
では、親権者でない相手にどの程度の負担を求めることができるのか…これについてはぞれぞれの親の資産や収入など状況に応じて個別に判断することになります。あなたの場合、資格を生かして働いているので、その分を加味した金額の請求が認められることになります。
・自己破産すると養育費の支払義務はどうなるのか
親権者とならない者が養育費を負担することになったとしても、離婚後に養育費の支払義務者側の事情が
変わってしまうことは多々あります。
では例えば、支払義務者が自己破産した場合、養育費の支払義務はどうなるのでしょうか。
破産して、さらに裁判所から免責の決定が下されればそれまで背負っていた債務から解放されるのが原則です。しかし破産法では、政策的な理由から免責されない債務をいくつか定めており、その中では親族間の
扶養義務に基づく債務も免責の例外とされているのです。
まず、破産者が夫婦・親子・兄弟姉妹といった関係に基づいて負担すべき義務については免責されないものとしています。
いくら破産して免責された後であっても親族の関係まで否定されるわけではないですし、子供の扶養義務
まで免責してしまうのでは子供の成長や福祉のためによくないからです。なので、あなたの場合も、子どもの養育費は送金し続ける必要があります。
さらに破産法では、破産者が夫婦・親子・兄弟姉妹といった関係から負担すべき義務に類する義務であって
契約に基づくものについても免責の例外としています。
離婚した夫婦間での生活費負担義務がこれに該当する場合は免責の決定があっても養育費を支払い続けなければならないでしょう。
こういった判断はケース・バイ・ケースとなるので、弁護士や管財人とよく相談してみて下さい。