親権者になるための基準
2014年05月9日
親権者になるための基準
◆母親が親権者になる場合が多い夫婦間の愛情が冷め切ってしまっても、可愛い子供の将来のことを考えて離婚を思いとどまっている夫婦がたくさんいます。
このような夫婦がいざ離婚を決意したとき、双方がともに子供を引き取る権利を主張する可能性が非常に
高いでしょう。子供の親権をめぐって争いが生じた場合、調停や審判、もしくは裁判といった法的な手続きによって親権者を決定することとなります。
過去に家庭裁判所で取り扱われた事例を見る限り、母親が親権者や監護者になっているケースが非常に高いといえます。これは、実際に子供の世話をしたり、子供の教育環境を整えるという点から検討した結果、「それができるのは母親であり、母親と一緒にいた方が子供にとって生活がしやすいだろう」と判断されることが多いからのようです。
とくに子供が義務教育に達する前の幼児である場合には、そのように判断される可能性が一層高くなる
でしょう。
しかし、場合によっては父親が親権者になる場合もあります。
父親と母親が同じだけの収入をもっており、子供を養育する環境としては両者ともに問題は見られなくても、離婚に到った原因が母親にあるような場合には、母親は親権者にふさわしくないと判断され、
父親が親権者になることがあります。
◆親権者の決定基準となるポイント
①監護の継続性
現実に子供を監護している者を、優先的に親権者とします。
もし別居期間中で母親が子供の看護をしているならば、母親が親権者にふさわしいということです。
②健康状態が良好であるか
子供を育てていくには、心身ともに健康状態が良好であるべきことは言うまでもありません。
病弱であったり、鬱病になるなど精神状態が不安定であったり、アルコールや薬物に依存しているような
状態では、子供を十分に養育できないと判断され、親権者としては不適格とされます。
住所のない放浪生活を送っている人も、同様に不適格と判断されます。
③子供と接する時間の確保
子供を教育し、十分に食べさせていける収入がなければならないのは、父母ともに条件は同じですが、
子供と一緒にいてあげる時間が多くとれるか、というのも重要な点となります。
母親は週6の早朝から夜まで働かなければやっていけないが、父親は土日が休みで平日は必ず夕方には帰宅可能、というような場合であれば、父親の方が子供と接する時間が多くなり、親権者として適当と判断される可能性が高くなります。
④子供の年齢および子供自身の事情の考慮
裁判所の調停や審判では、「子供は、10歳頃までは母親とのスキンシップが必要である」と考えて判断を
下すケースが多いようです。これに対し、「15歳にもなれば、自分で物事を考え、意思決定できる能力が
備わる」と判断され、子供の意思や希望も尊重されるようになるのです。
また、住む場所や通いなれた学校が変わってしまうという急激な環境の変化は、子供にとっては大きな心の不安に繋がります。
したがってこうした事情も考慮されることとなります。
⑤経済的事情は大きな問題とならない
子供の幸せを、お金ではかることができるでしょうか。
経済的に豊かであっても、だからといってそれが子供の幸せに繋がるとは言い切れません。
親権者決定の際に、経済的事情は大きな基準とはなりません。
⑥離婚に際しての責任
離婚の原因がどちらかの不貞行為であれば、不貞行為をした方の親は親権者にも監護者にもなれない、と
他国では法律ではっきりと定められています。
しかし日本にはこのような法律がなく、有責か否かは決定的な基準とならないようです。
しかし、健康状態や収入面などのあらゆる条件が対等である夫婦が、親権を主張した場合には有責である方の配偶者が不利になることもあるでしょう。
⑦「監護補助者」となる者がいるか
父母がともに仕事をもっていれば、子供の養育をしてくれる監護補助者がいなければなりません。
祖父母やその他の親族が監護補助者になることが多いようですが、必ずしも親族である必要はありません。
監護補助者自身の人格や心身の状態、育児経験などを考慮し、その上で適切であれば、乳幼児保育施設を
監護補助者として立たせる場合もあります。
育児経験の有無などが重要なポイントとなるでしょう。