うつ病の妻と離婚することはできるのでしょうか
2014年05月12日
うつ病の妻と離婚することはできるのでしょうか
ケース1
結婚5年目になる次男の嫁が、うつ病と診断されました。
治療の効果は、一歩前進しては一歩後退とあまり思わしくありません。
また、以前から姑である私とは、折り合いが良くなかったのですが、病気にかかってからはほとんど家事もこなせなくなり、ますます手を焼いております。
この頃は、次男も看病に疲れ、「もう別れたい」といっているのですが、
離婚することは可能なのでしょうか?
助言
まず、当事者間で協議して、離婚の合意が成立しないのであれば調停や裁判ということになってしまいます。
裁判離婚が認められるためには、離婚できる正当な理由が必要になってきます。
正当な理由として認められるのは、
①不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上生死不明
④重度の精神病にかかり回復の見込みがない場合
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること です。
今回の場合は、嫁の鬱病が回復の見込みがないかどうかが問題となります。
この点について、裁判所はかなり病人に有利に判断する傾向にあります。
これは、病気にかかるのは本人の責任ではなく離婚の責任をすべて病人に負わせるのは酷であるとの考え方からきています。
精神病を理由として離婚が認められるためには、
通常、離婚後の病人の生活を他方がある程度補償したり、
2年から3年治療を続けても回復の見込みがないと医師に診断されたりすることが必要です。
今回の場合は、まだ、回復の見込みがないとは言い切れないので、
鬱病を理由とした離婚は難しいと思われます。
それでも離婚を望むのであれば、金銭的な援助を申し出るか、
病気以外の「婚姻を継続しがたい理由」を裁判で併せて主張するしかないでしょう。
・認知症の相手と離婚できますか?
ケースは鬱病の事例でしたが、妻や夫が認知症を患った場合に離婚可能かどうかという問題があります。
どうしても離婚したい場合は訴訟ということになりますが、
認知症の場合は本人自身の責任ではないですので「不貞」や「悪意の遺棄」というような
責任の有無の問題とは根本的に異なります。
この場合、民法770条1項4号の「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」、
もしくは、5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に、
配偶者が認知症であるということが該当するかです。
認知症かどうかの診断の判断は医師がするものですし、本当に回復の見込みがないかどうかも、
そう簡単に判断できるものでもありません。
なので、配偶者が認知症で入院したからといってすぐに離婚請求したとしても、
離婚を認められることはまずないと言っていいでしょう。
また仮に、「強度で回復の見込みがない」と判断されたとしても、離婚後の生活や療養など、
ある程度相手の生活が成り立つ場合でなければ、裁判所は離婚をなかなか認めてくれません。
しかし、「強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと」に該当しなくても、
認知症の為「婚姻を継続しがたい重大な事由」が生じているならば、
その事由によっては離婚が認められることもあります。
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